コラム

2021.06.16

体温を上げる生活習慣|免疫と代謝がアップする“温活”のすすめ

昔から「冷えは万病のもと」と言われますが、平熱が低い人では免疫力が低下している可能性があります。そればかりか、低体温は美容面でもマイナス要素。冷えからくる血流の悪化は、むくみや肌荒れ、肥満とも密接に関係しています。そこで今回は、日常生活で簡単にできる体温アップのコツをご紹介します。

  

体温は37℃がベスト!?平熱が高いほうが良い理由とは

 新型コロナの感染拡大以降、体温を測る機会が増えました。平熱が高めの人では、街中の検温で困ることもあるそうですが、人間の体にとってベストな体温は「37℃」だとされています。

 どうして37℃が良いのかと言えば、血流がスムーズになり、代謝を促す酵素の働きも活発になる温度だからです。代謝とは、食べ物の栄養素をエネルギーに変えたり、体内で必要な物質に作り変えたりすること。これを手助けするのが酵素の役割です。つまり、私たちの体は37℃でうまく機能するため、平常時の体温は37℃に近づくようにコントロールされています。

暑い時に汗をかくのは気化熱で体温を下げるためですし、寒い時に体が震えるのは体温を上げるために筋肉が動くから。そうやって全身を37℃に保つことが理想ですが、手足が冷えやすい人も多いでしょう。体熱は血流に乗って運ばれるので、臓器が集中する“体の芯”から熱が逃げないように、末端の血管を収縮させているのです。

 

体温が下がると病気のリスクが上がる!

「体温が1℃下がると免疫力が30%下がる」というような話も聞きますが、この数値を裏付ける有力な論文は見当たりません。けれども、体温が下がって血流が悪くなると、免疫を担当する白血球の動きが鈍くなるのは確かです。

多くの感染症では熱が出ますが、これは免疫細胞がウイルスなどと戦っている証拠。体温が高いほうが免疫細胞の攻撃力が上がるため、微熱程度であれば解熱剤は飲まないほうが良いとされています。

また、多くのがん細胞は35℃前後で増殖が盛んになりますが、39℃を超えると増殖が止まり、42℃で死滅すると言われています。心臓の癌が極端に少ない理由の一つとして、血流が豊富な心臓は、他の臓器よりも温度が高いことが挙げられます。

 

現代人は低体温!?原因は運動不足かも…

ところで、自分の平熱が何度かご存じですか? 近頃は36℃以下の人も増えていますから、ベストな体温が37℃と聞いて、驚かれたかもしれませんね。

 1957年の調査によると、1050歳前後の健康な男女の体温の平均値は36.891。それが2008年に行われたインターネット調査2では、大人36.14℃、子ども36.39℃と、0.5℃以上も低下していました。

 この結果について、体温を正しく測れていない可能性が指摘されていますが、ライフスタイルの変化による筋肉量の減少も否定できません。筋肉は人体最大の熱産器官なので、筋肉量が減ると体温が低くなるのです。

 筋肉量は加齢によって減少しますが、それは昔も今も変わりません。大きく変化したのは、日常生活での活動量でしょう。50年前は手作業で行っていた掃除や洗濯も、今はほとんど家電任せ。短い距離でも車や電車に乗り、1日に15分も歩かない人が多いのではないでしょうか。


  

体温アップでスタイルと美容がアップ!

活動量や運動量の低下にともない、筋肉量は減少します。筋肉が落ちると基礎代謝が落ちて太りやすくなると言われますね。基礎代謝はじっとしていても消費されるエネルギー(カロリー)量のことで、1日の消費エネルギー全体の約6割を占めています。

 つまり、太らないためには筋肉を維持することが重要。筋肉は熱産生器官だと述べましたが、体は熱を作って維持するために、たくさんのエネルギーを使っています。そのため、筋肉をつけて体温を上げれば、基礎代謝がアップし、痩せやすくなるわけです。

 体温を上げるメリットはそれだけではありません。血流が良くなることで、肩こりやむくみも解消されます。さらには、お肌にも様々な良い影響があるのです。

 というのも、血流が悪いとお肌の新陳代謝が滞るだけでなく、胃腸の働きも悪くなってしまいます。「腸はお肌を映す鏡」と言われる通り、便秘がちだと肌トラブルが起こりやすくなります。反対に、腸がきれいになれば、お肌もきれいになるはず。体温を上げて冷えを改善することは、美容にとっても不可欠なのです。

  

体温を上げる活動“温活”を習慣に                                        

冷えを感じていなくても、平熱が低い人は“温活”を習慣にすることで、体の変化を実感しやすいのではないでしょうか。衣類やエアコンなどで外側から温めるのも大切ですが、基礎代謝を上げるには体の中から温めるほうが効果的です。ここからは、毎日の生活にとり入れやすい7つの温活メソッドをご紹介します。

 

【温活1】朝目覚めたら布団の中で体を動かす

朝は体温が低い時間帯です。布団の中でゴロゴロしたり、手足をバタバタさせたりして体を温めましょう。朝が弱い人は体温を上げることで、目覚めが良くなる効果もあります。


 

【温活2】起きぬけに白湯を1杯飲む

 健康な人は寝ている間にコップ1杯分の汗をかくと言われます。のどが渇いている時は冷たい水を一気に飲みたくなりますが、そこはちょっと我慢して、体温が低い起床時は白湯にしましょう。50℃前後の白湯を1杯、ゆっくりと飲むことで、内臓が温まり、胃腸の働きが良くなります。

 

【温活3】3食必ずたんぱく質のおかずを食べる

食事をすると体が温まりますね。食事誘発性熱産生と言いますが、栄養素を代謝する際、一部が熱になって消費されます。その熱になる割合が最も大きい栄養素がたんぱく質です。つまり、同じカロリーを摂る場合、ごはんやパンなどの糖質よりも、肉・魚・卵・大豆などのたんぱく質食品のほうが、体が温まり、消費カロリーも多くなります。

 

【温活4】体を温める食材を選ぶ

夏の野菜は体を冷やし、冬の野菜は体を温めると言われます。旬の食材が美味しいのは、栄養価が高いこともさることながら、その時期に体が欲する食材だからでしょう。また、土の中で育つ野菜も体を温めてくれます。夏もエアコンで冷えたりしますから、生姜、にんにく、ねぎ、にんじん、ごぼう、れんこんなどを毎日食べると良いですね。

 

【温活5】すきま時間に手足をグーパーする

寒い時は特に手足の血流が減ってしまいます。指を曲げたり伸ばしたりするだけでも、血流がアップして温まるので、気が付いた時に行うようにしましょう。

 

【温活6】スクワットを日課にする

 体温アップの鍵を握る筋肉。スクワットは、太ももやお尻などの大きな筋肉が効率的に鍛えられるため、運動の時間がとれない人にぴったりです。正しくやれば1日5回でも十分。膝を曲げる角度や回数など、無理のない範囲で続けましょう。

 

<スクワットのやり方>

  • 足を肩幅より少し広めに開いて立ち、両手は足の付け根に添える
  • 背筋を伸ばし、お尻を突き出すようにして、腰をまっすぐ下に落とす

※3秒かけて、太ももと地面が平行になるまで腰を落とすのがベスト

  • 腰を上げる時もゆっくりと3秒かけて膝を伸ばしていく

※膝は伸ばしきらず、少し曲がったところで止め、また腰を落としていく

  

 

【温活7】4142℃のお湯で反復入浴する

 寝る前にぬるめのお湯に長時間浸かるのも良いのですが、長風呂が苦手な人には反復入浴がおすすめ。少し熱めのお湯に5分浸かって5分休憩を35回繰り返すと、血管運動が活発になり、体の芯から温まります。ただし、かなり体力を消耗するので、くれぐれも無理しないように。お腹がすいている時も避けたほうが無難です。

 

 

まとめ

体温を上げると良いことづくめですが、その方法は意外と簡単だと思いませんか? 毎日のちょっとした行動で体が温まり、続けることで体質が変わります。最後になりましたが、温活を始めるなら、ぜひ自分の平熱を知っておいてください。

 ちなみに、起床時に寝たまま測る基礎体温と平熱は違いますよ。平熱の定義はありませんが、活動時の体温と捉えて良いでしょう。体温は測るタイミングによって変動するため、平熱を知るには、起床時・午前・午後・夜の1日4回、食事の影響を受けにくい時間帯の体温を数日間測って平均を出します。

 体温は健康管理バロメーターです。体調が悪い時だけでなく、まめに測って美容や健康に役立てましょう。

 ------------------------------------

参考文献

  1. 日新医学; 44, 633-638, 1957
  2. https://www.terumo-taion.jp/terumo/report/03_2.html